正式な名前はアーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ。
ニンニクとオリーブオイルと唐辛子のパスタで、ニンニクの香りと唐辛子の辛さが食欲を増幅させる一皿だ。なぜそう思ったのかは分からないが、僕は最近までこのペペロンチーノと言うパスタを、日本蕎麦で言うと“かけそば”の立ち位置だと思い込んでいた。うどんで言えば“素うどん”のポジション。この立ち位置というのは、その料理を構成する要素を必要最小限にまで絞った基本形態であり、此処にトッピングなどを加える事でバリエーションが広がって行くシステムだ。蕎麦の場合だと基本形態である「かけそば」に玉子を落とせば「月見そば」になり、海老天を乗せれば「天ぷらそは」になる。
僕はペペロンチーノも同様に、パスタ料理の最も最もベーシックな具なしの一皿であり、そこに何か具を加える事で名前も味も変化するといったイメージを持っていたのだった。しかし、自分でペペロンチーノを始め、色々なパスタ料理を作る様になってその考えは全く違うって事を、改めて認識した次第で、実にお恥ずかしい話なのである。恥ずかしい話ではあるのだが、僕と同じ様な勘違いしている人も世の中には居られるかもしれないので、僭越ながら何がどう違うのかを此処に記しておく事にする。
現時点の僕は、パスタ料理には少なくとも二つ以上の系統があると認識している。ひとつはニンニクの香りを移したオリーブオイルからスタートする系統。そしてもうひとつがグアンチャーレなどの加工豚肉から豚の脂を抽出してスタートする系統だ。この大きく二つの系統にそれ以外のものを纏めて一つとするならば、三つには系統立てる事が出来るのでは無いだろうか。前者のニンニクの香りを移したオリーブオイルで作るパスタの代表格がアーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノやアラビアータであり、後者の豚から抽出した油で作るパスタの代表格がカルボナーラやアマトリチャーナになる。つまりパスタとは基本的に色々な油の旨さを楽しむ為に、調理法や具材を工夫した麺料理であり、完成された一つの味に対してトッピングを加える要素も有るにはあるが主たる特徴とは言い難い。この辺りがペペロンチーノとかけ蕎麦が似ているという認識が全くの的外れであったと反省した部分であり、むしろ例えるならペペロンチーノは塩ラーメン、カルボナーラは豚骨ラーメンに似ていると言う方がまだしっくりくるのでは無いか、と“いまのところ”感じている次第だ。そんな僕の“いまのところ”のペペロンチーノの骨格レシピは以下である。
◆今回のポイント
・オリーブオイルにニンニクの香りをしっかり移す。
・ニンニクのカット方法、火の入れ方は展開に寄って変わるが、骨格レシピでは潰すだけとする。
・イタリアンパセリでは無く大葉で爽やかに。
・麺を早めに上げて、フライパンで煮込む事で小麦を溶かす。
●器具
・フライパン。アルミ製がベスト。温度特性だけで無く明るいシルバーが具材の認識率を上げる。
・トング。パスタを鍋から移す、盛り付ける。用。
・焼肉トング。アンチョビを取ったり、麺を一本摘んだり、細かい作業用。
・計量スプーン。
・料理用のはかり。
・レードル。一杯で50ccのモノを愛用。
・ゴムヘラ。少しでも勿体無く無いように。
・材料皿
・包丁
・マナ板
・キッチンタイマー
●材料(一人前)
オリーブオイル:大さじ2 +最後に少量かける分。
ニンニク:ひとかけ〜ふたかけ。潰して、芯を取っておく。
唐辛子:お好みだが、辛党の私はペペロンチーノ ピッコロ3つくらい。
パスタ:83g(500gを6食分にする計算による)濃い味のソースになるので、太いブロンズダイスを推奨。僕の定番は明治屋galofalo signatureスパゲッティ1.9mm 推奨茹で時間は10分。
大葉:3〜4枚、みじん切り。
アンチョビ:0.5〜1フィレ。大きさによる。
水:1L
塩:10g(小さじ2)
魚醤:小さじ1/2 。鮎の魚醤とかニョクマムとか。
出汁:鶏がらスープとかコンソメとか小さじ1/3
チーズ:パルメジャーノ レッジャーノなど、最後にお好みで。
◆作業
●下拵え
・とりあえず、麺を茹でる為に鍋に水1Lに塩10gを入れて火にかける。ポコポコと沸騰させる。
・ニンニクは半分に切り、芯を取ってから包丁の腹で潰す。・大葉はみじん切りにして材料皿に。
●調理
・手前に傾けたアルミパンにニンニクを入れて、オリーブオイル大さじ2を加えてから火にかける。中火でオイルから泡が出てきたら、極弱火にしてニンニクの香りをオイルに移して行く。時々火から離してフライパンの温度を下げながらシュワシュワと泡が出る状態を維持して5分くらいかけて、抽出していく。
・ニンニクに色が付いて来たら、パスタを茹で始める。茹で時間表記10分なら2分前の8分でタイマーを掛ける。
・アルミパンにアンチョビを投入。ちょっと炒めて香りを出したら火を止めて、フォークと焼肉トングでアンチョビとニンニクを解す。ニンニクは繊維に沿って解す様に。
・パスタの茹で時間が残り3分になったらアルミパンのコンロに中火を付けて、茹で汁を75cc(レードル一杯半)と水75ccを移して沸かす。出汁素材(コンソメなど)を加え、弱火にしてから味を見て魚醤を加える。
《※展開メニューの具材投入はこのタイミングになる》
・タイマーが鳴ったら麺をアルミパンに移す。中火にしてよく混ぜる。この工程ではパスタの残り2分の茹で時間を使って、パスタにソースを吸わせながら、煽って空気と混ぜる事で全体にとろみを付ける感じ。水分の調整が難しいが、2分経っても水気が多いようなら、トングで麺を手前縁に抑えながらアルミパンを奥に傾けてソースを集め、そこで強火で煮詰めて少なくする。この状態でソースの量が大さじ1〜1.5程になったら大葉を加え、火を止めて7〜8回煽り混ぜる。
・エクストラバージンオリーブオイルを少量かけて、軽く煽ったらおそらく丁度良い塩梅なので盛り付ける。
・盛り付けはトングでパスタを掴んだら皿の中央付近に慎重に下ろしながら、皿を回転させると料理店の様に纏まる。アルミパンに残ったパスタも同様に乗せて、最後にゴムヘラでアルミパンに残ったソースを麺に掛ける。
・これだけで十分に美味いが、味変にはパルミジャーノレッジャーノや醤油が美味しい。
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倉田 貴也 (火曜日, 30 7月 2024 17:33)
とても似たスタイルで25年前くらいからよく作ってきました
自分の作り方が正しかったなと思いました。ペペは誤魔化しがきかない料理なので
注文が入るとシェフは気合が入るそうです
茹でるときに塩は無意味という意見もあるけど入れているしオリーブオイルも垂らしています
季節によって水分調整が難しいので一度麺をザルで取り上げて煮汁をかけながら炒めなおしています
またベーコンやパンチェッタをにんにくと炒めておいて最後に絡めたり途中で合わせて味変したりしています
家族にはあまり評判がよくないので最近はみんなが寝た後や外出しているときに作っています