STAR WARS 全9作を観終えて

◯ 最終章「スカイウォーカーの夜明け」が公開されて一ヶ月以上経ってようやく観てきました。別に期待して無かったとか言う訳では無くて、タイミングを伺っていたのですが、CAT'Sが公開されてスクリーン数が減ってきたので遂に行って来ました。

 思い起こせば僕がSTAR WARS に出会ったのは小学校四年生の時でした。当時学校で一番仲の良かったともだちのお父さんに連れて行って貰ったと記憶しています。場所は新宿ミラノ座だったか有楽町の有楽座だったかは覚えていませんが、とても大きな映画館だった事と、映画がメチャメチャ面白かった事は忘れません。その時に僕の中で「映画」と「SF」と「アメリカ」の株が急騰したのでした。そしてそれは、今思えばデザインの凄さを実感した経験だったのかもしれません。この世に存在しない世界を、さも実在するかの様なリアルな映像で示してくれたジョージ・ルーカスの名は9歳の僕の脳に確実に刻まれました。遠い銀河のはるか昔の戦いの物語と共に。

 

 確か「帝国の逆襲」公開の頃のインタビュー記事で、何故九つの話の中で真ん中のEp456を映画化したのかと問われたルーカスが、一番派手で映画向きのエピソードがこの三作だったからと答えていたと記憶しています。だから九つ全部が観られるなんて当時は思ってもいなかったのでした。観終わって…、40年以上気にかけてきた銀河の戦争の結末を、九つのエピソードの完結を観ることが出来たことは本当に感慨深い体験でした。銀河に平和が訪れて本当に良かったと嬉しく思ったと同時に、9歳から観続けて来たスターウォーズが終わってしまった事への虚無感と満足感の入り混じった気持ちが湧き上がりました。感動をしたのだと思います。少し、いや結構涙が出ました。

 

 少し時間が経ったので感想を書いておきます。ネタバレが酷いですので、この先は全てのエピソードをご覧になった人だけご覧下さい。

 

 スターウォーズは“フォース”と言う強大なパワーをめぐる物語です。この世もあの世も超えて何処にでも存在するけれど、素養のある者しか扱うことが出来ない理(ことわり)の力。この力を理性的に抑制して平和の維持に使用する“ジェダイ”と、独占して世界の征服を企む暗黒面の“シス”。二つの流派の長きに渡る抗争の歴史を9つの章立てで描いています。

 数十年間に及ぶお話なので複数世代の様々なキャラクターが登場しますし、年代記として観るのが正統だとは思いますが、敢えてこの物語の主人公は誰だったかと思い返してみます。全編を通して存在が語られる者は数名しか居ないのですが、その中で最も劇的な人生を送った存在が浮かび上がって来ます。それはシスの暗黒卿、ダース・シディアスこと皇帝パルパティーンその人です。そう実はスターウォーズ・サーガとは、一子相伝の掟を持つフォースの暗黒卿が弟子を探し続ける物語なのです。

 

エピソード1から順にパルパティーンを追っていきましょう。

 惑星ナブーで政治家だった彼は、実はシスの暗黒卿ダース・シディアスでありました。国民を欺いて銀河帝国を樹立し、最初の弟子ダース・モールと共に銀河をシスの力により征服しようと勢力を伸ばしていく訳です。主役の誕生ですね。

 彼は表の顔でも実力を発揮して幼いアミダラ女王の側近となり、ナブーを実質的に支配。銀河共和国の元老院議員になった彼は、裏表を巧みに使い分け、策を弄してナブーを侵略させる事で同情票を集め、元老院の最高議長にまで上り詰めて行くのですが、不幸な事に権力を伸ばしていく過程で愛弟子ダース・モールを失ってしまうのです。そこから彼の弟子探しの物語が始まります。

 

 先ずはドゥークー伯爵ことダース・ティラナス。元ジェダイであったこの弟子は、表の地位もあって銀河帝国を築くにあたって大いに活躍してくれました。しかし、強力なフォースの才能の持ち主であるジェダイのパダワン、アナキン・スカイウォーカーに倒されて、パルパティーンはまたしても弟子を失ってしまいます。すると今度はこのアナキンに目を付け、あの手この手で心の隙間に入り込み懐柔しようと企てます。この辺りの策士ぶりも見事なもので、色々有って遂にアナキンは暗黒面に堕ち、パルパティーン史上最強の弟子ダース・ベイダーが誕生するのです。ここまでがエピソード3で、パルパティーンが立身出世する成り上がりの話が語られています。

 

 エピソード4からの所謂最初の三部作と言うのはパルパティーンの黄金期を描いています。表舞台には殆ど姿を表さないのですが悪の帝王とはそう言うものです。代わりに弟子のダース・ベイダーが全面に立って活躍します。巨大になり、最早怖いもの無しの帝国ですがジェダイも未だ滅んではいません。共和国が滅び、反乱軍となっても抵抗を続けます。最も問題なのは、その中に協力なフォースの才能に恵まれた一族が、ダース・ベイダーの子供達、双子のルークとレイアが居ると言う事でした。コイツらを始末するか取り込むかしなくては枕を高くして眠れません。様々な手を使って始末にかかりますが、最後の最後に愛弟子ベイダーに寝返られ、ルークとレイアは殺せも取り込みも出来ず、最強の弟子ベイダーにも死なれてしまいます。更には自身も殺されて万事休す。まさに盛者必衰と勧善懲悪のお話。ここまでがエピソード6ですね。ルーカスが一番派手で映画向きと言ったのも肯けます。

 

 エピソード7からの直近の三部作は暫くの後といった感じで始まります。帝国の残党はスノークと言う最高指導者のもと、ファーストオーダーと言う新たな組織で再建しています。スノークにはカイロ・レンと言うダース・ベイダーに似た暗黒面のフォースの使い手が部下におり、あたかもシスの暗黒卿の師弟関係の様です。そしてもう一人協力なフォースの才能を持つゴミ拾いの少女レイ。此方はルークに似た風貌。何やら韻を踏んでいる感じで、因果関係を感じざるを得ません。

 

 実はダース・シディアスは生きており、スノークは身代わりのクローン人形だった事がエピソード9になって分かるのですが、帝国を復活させようと企てるパルパティーンはスノークを使って裏からベイダー卿の血筋であるカイロ・レンを操り、その先に居る自身の孫であるレイをシスの後継者たる最後の弟子にしようと企んでいたのでした。結局はレイに拒否られた挙句にスカイウォーカー性を名乗られると言うパッドエンドとなってしまうのですが、最強の暗黒卿ダース・シディアスが自身の命と引き換えに一子相伝のシスの掟を継承する為に選んだ最後の弟子は、レイアとソロの息子と見せかけて自分の孫娘だったという所が、悪人と言えども家族の絆を感じさせるお話だったのかなと思います。

 

 と、以上の様にスターウォーズは一人のシスの生涯を綴った物語が軸になっているのです。この視点で観るとパルパティーンが主役と言っても差し支えないでしょう。

 

でも…、

 

 確かにエピソードを1から順を追って観るとそう見えるのですが、公開順に観るとまったく見え方が変わるのがスターウォーズの面白い所です。公開順で観るとこの物語はジェダイの騎士ルーク・スカイウォーカーの成長の物語として見えて来ます。Ep456から初めてスターウォーズを観ると、才能は有るが心の未熟な若きルーク・スカイウォーカーが、仲間と出会い、様々な経験を積んでジェダイの騎士となり、暗黒面に落ちてしまった実の父親を倒して銀河を救う物語。としか見えません。

 

 続くEp123ですが、先にEp456を観ている前提に立つとこのパートは過去の話として、ルークの父親に焦点を当て、彼が何故暗黒面に落ちたのか、ジェダイとは、シスやフォースとは何なのかと言う世界観を補完し、ルークのルーツを探り、銀河の歴史を知るパートとなります。回想シーンみたいなものですね。

 

 そしていよいよ新章突入のEp789では、ジェダイの騎士となっても未だ心は未熟なままで引きこもってウジウジしているルークが、最後の最後に立ち上がり、死してようやくレイの背中を押せる本当の意味でマスターと言う存在となる成長の物語です。続編とか後日談に近い感じもありますが、ルークの生涯を追った大河ドラマとしてカタルシスのある完結を見せてくれました。

 

 40数年を掛けて、この順番で最後まで見終える事が出来て本当に良かったと思います。

 

 いつまで経っても父親も師匠も越えられずダメダメだったルークが、こんなに立派になるなんて!

その過程を実際に年月をかけて見せてくれた事で、ちょいと憧れていた親戚のカッコイイお兄ちゃんが、悩んだり、落ちぶれたりしながらも、最後はやっぱりカッコいいアニキでいてくれた感じというか、やっぱりこの順に観たからこその感動だったと思います。良かった!

 

 

 しかし…、思い返して見るとジェダイの人達ってめんどくさい人が多いですよね。