リノベレコード→「一畳和室」2013.12

◯自宅にアトリエが欲しかった私は、娘の部屋を狙っていた…

 なんとかモノにしたいと思っている。
 この部屋は一階にあり、直ぐに庭に降りられる所も作業部屋にもってこいだった。加えてこの部屋、広さはそれほどでも無いが廊下からの出入り口が二つあり、私のアトリエと妻の家事部屋に仕切って使用ができる。今流に言えばDENが二つ作れる感じだ。
 何も娘の部屋を取り上げて、リビングで寝てくれと言う訳では無い。丁度春から息子が一人暮らしを始めた事で我が家で一番の陽当たりの良い二階の和室が空き部屋になったので、そこに移って欲しいと云う提案である。家族3人がwin win winとなる正に大岡裁きの様な提案なのだ。
 娘に話を持ちかけて見ると…、どうも食い付きがよろしくない。聞けば「和室」に抵抗感を感じている様である。気持ちは解る。私も若い頃はフローリングやベッドに憧れたものだ。将来子供が出来たら何としてでもソファに座らせてやりたいと誓った日の事を忘れた事はない。ならば、改装すればよろしい!と、言うことで、女の子の部屋らしく、明るくてミルキーな白っぽいフローリングの部屋へとリノベーションする事にした。
 
 しかし…、この部屋は我が家に残った最後の和室だ。畳と決別する判断を迫られた時、多少なりとも躊躇があるのが日本人たるものだ。小さくても良い。アトリエは欲しい。しかし畳にゴロッと寝転がる快楽を自宅で味わえなくなるのはあまりに寂しい。
 思案の先の解決案は、妻の家事部屋に畳ベッドを作る事だった。しかも本畳の。
 
 収納と居住性を併せ持つ「小上がり」とか「畳ベッド」等は「劇的ビフォーアフター」を始めとするリノベーション番組に度々登場する定番キラーアイテムではあるが、大抵は新建材の軽量畳や畳的な床材や敷物が使用されるものだ。巷では軽くて水に強い機能性に優れた素材がドンドン開発されている。重くサイズの自由も効かない本畳は敬遠されて然るべきだが、今回はあえて本畳で行く!古い家を買って住む者として、この家にある畳をたった一枚でも残していく使命があるのだ。
 
 かくして、本畳ベッドを作る事となった。3畳ほどしかない小さな部屋の畳ベットではあるが、和室をひとつ作る心意気である。妻の家事部屋であり、息子が帰った時の部屋であり、雨天の物干し部屋でもある。
 
 
そしてなにより、我が家のたった一畳の和室である。

●畳ベットの下は引き出し式の収納とした。

 

全て開ければ部屋の床が見えなくなるみっしり感。

●その後、脇床風の地袋と棚を拵えて和室感アップ。

 

●アクセントは棚受けの海洋生物たち。最下段は鯨。

●中段は鮫。

●一番上には…、魚!