wood works

キャメルでオーストリッチなコブ・ソファ

作品名: ラクダのコブのソファ

Camel bump sofa 2020

製作年度: 2020/01

素材:檜、サーモウッド、フェイクレザー、ウレタン、ウェービングテープ

Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎
Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎

◉十年以上前に買ったソファのクッションがヘタってしまいました。安物のソファではありましたが、猫と暮らす家には高価なソファは少々勿体ないものです。実際、爪の餌食となったソファはボロボロにされて、二度ほど生地を貼り替える事になりました。生地を貼り替えればソファは何度でも蘇生しますし、気分も変わって良いものですが、中のウレタンがへたってしまうと、これを修理するのは結構難儀です。接着されたウレタンを綺麗に剥がす事を考えると、うーん…タイヘン…。どうせ大変ならいっそイチから作ってしまおうか!と今回の製作となったのでした。

 

知人に最近は何を作ったんだい?と聞かれた時、「ソファだよ」と答えると大抵の方はびっくりしてくれます。どうも私の周りではソファは購入する物と決まっているらしく、自分で作ると言う発想はあまり無いみたいです。でも、私にとってはソファを作る事自体は犬小屋を作る事とそれ程変わらない感覚でした。何故かと言えばそれは『作り方を知っていたから』なんです。では一体どこでその作り方を覚えたかと言うと、それはショッピングモールなどのインテリアショップです。そういったショップには家具のブランドが販売促進やブランディングアップの為に「工場での製作工程を紹介したのムービー」を流れている事があります。これらの動画は、そのブランドが売りにしている他社製品との差別化ポイントが紹介されていたり、生産が職人の手作業で行われる高品質な製品であることのアピールだったりするのですが、そんなムービーを幾つか見ていたらソファの基本的な構造と工程を知る事が出来ました。

 

そういったムービーを見るたび「これは作れるなぁ。」

と思ってはいたのですが、問題なのはデザインです。

シンプルで、飽きのこない、高級感のある素敵なソファは世の中に沢山あります。

 

僕が物作りをする上で、一番大切に思っている事は、「世の中に無いモノを自分で作ろう」と言う精神です。

作った方が安く済むからと言う動機では出来るだけ始めたくありません。

自分の好みで考えると、出来るだけシンプルで、ベーシックな、ちょっと高級感のあるモダンなデザインのソファが好みです。だったら買えばイイじゃないかとなってしまいます。

 つまり、ソファに関してはデザイン的なモチベーションがあまり上がらなかったんです。

 

とは言え、へたったクッションに座り続けるのも如何なものかですから、真剣に考え始める事にしました。

様々な方向から考えた末に行き着いた今回のアプローチは“機能性”です。

今回は面白い形を具現化するってことでは無くて、我が家での使い方、我が家のライフスタイルにマッチする、機能的で、我が家に最適な形状を探し出す事をモチベーションにする事にしました。

さあ、デザインの時間です!


Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎
Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎

●まずは必要な構成の確認。壁面に背中を付けた長手の三人掛けと一人掛けのセットです。その他に一人がけの椅子を三脚使っています。我が家ではソファはくつろぐ為だけのものでは無くて、家族で夕食を摂るための食卓椅子でもあります。夕食から晩酌になだれ込むスタイルなのです。

Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎
Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎

●なので、ちょっと低めのダイニングテーブルと合わせて使用します。このテーブルの話はまた別の機会にしたいと思いますが、くつろいで呑みながらの夕食タイムに最適な、テーブル高を625mm、座面高を380mm位に設定しています。



Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎
Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎

●今回は幾つかのレイアウト変更に対応できる様に三人掛けを二人と一人に分けて使える様にデザインしました。1+3、2+2、1+1+2の三つのパターンでレイアウトする事が出来ます。我が家ではお正月などの親族が集まる時はその方が都合が良い事が結構あります。

Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎
Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎

●自由な組み合わせの為のデザイン的な仕掛けが、背もたれを小さなパーツに分けて製作する事でした。野球のグローブの指の様な、ラクダのコブの様なものがイメージの素です。このデザインは私の小さな作業場での作業効率アップにも貢献しました。



Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎
Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎

●ソファのキモと言えばクッションです。ウェービングテープ→Sバネ→コイルスプリングの順に沈み込みが深くクッション性が高くなり、高級なソファに採用されます。しかし、Sバネもコイルスプリングも個人では入手が困難です。

 それと沈み込が深いとリラックスは出来ますが、食事には向かない。うちは食事をする事もあり、ウェービングテープのみで製作しました。ただ、底打ち感が出ないようにウレタンは硬いものから柔らかいものへと、厚を変えながら、複数枚貼り込みました。



Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎
Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎

●デザイン的な一番の特徴は一人掛けに現れています。肘掛けが右にしか無く、背もたれが左に行くにつれて低くなっています。この形状は機能性を求めて発想したものですが、意匠的にもとても面白くなりました。

Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎
Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎

●この様に二つ連結すると、ふたコブラクダの様な風変わりなシルエットで楽しく使えます。楽しいだけでは無く、実際に座ってみると肘の置き所に困りません。連結して大きなソファになるのは片側肘掛ならではの機能です。



Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎
Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎

●そして、付属家具としてサイドテーブルを作りました。正面向きに座った時には、サイドテーブル兼、左の脇息としても機能しますので両肘掛けのソファのように使用できます。

Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎
Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎

●勿論サイドテーブルとして使えますので、飲み物などを置いて、ゆっくり映画を観るのにも最適です。



Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎
Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎

●90度左に身体を向けると、サイドテーブルがmacのキーボードとマウス用のミニテーブルとして使用出来ます。マウスパッドもジャストサイズで作りました。

Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎
Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎
●この座り方の時に本来の背もたれが左に低くなっている事で、左の肘掛けとして機能するのです。脇に挟む様に体重を掛けられるこの左の肘掛けの座り心地は、右手でマウスを操作する人には至福です。


Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎
Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎

●三人掛けの方も片側だけの肘掛けになっていますが、これはゴロリと横になる時に、枕にしているクッションが頭の後ろに落ちてしまわないように、ベッドのヘッドボードの役目をしています。

Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎
Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎


Camel bump sofa 大鼬鼠拳銃郎
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●ソファも家と利き手と生活スタイルに合わせてデザインすると、とても快適になる事が分かりました。是非お試しを!